| 1989年 東欧 真冬に咲いた花 ハービー・山口は1986年に初めてベルリンを訪れる。東ベルリンに通じる検問所でプラカードを掲げて何かを訴えている若い女性がいた。彼女との出会いが本作のプロローグとなる。「父が東側に住んでいて、私に会いたいと手紙を出したという理由で投獄された。父を助けて欲しい!」 彼は人間の運命を引き裂く東西を分断する壁の存在に深い関心を持つようになる。 1989年冬、ベルリンの壁崩壊のニュースを聞いたハービー・山口は再び東欧に旅立った。時代が変わるという直感が写真家を突き動かしたのだ。ウィーンから、ベルリン、プラハ、ワルシャワ、ブタペストを相次いで訪れる。プラハ到着の翌日には共産党政権が崩壊するビロード革命に遭遇している。しかし、彼の目指したのは歴史の転換点をドキュメントすることではなかった。社会情勢が急変する中でも作品テーマは不変。どんな状況でも、未来を信じられれば人間は優しい気持ちになれること伝えようとしている。緊張の中に垣間見られる人々の緩んだ表情から、壁の崩壊で見えてきた未来の希望が読み取れる。 その後、彼は何度となくこの地を訪れている。しかし1989年の冬のような身震いするようなポジティブな表情とは二度と出会うことはなかったそうだ。自由が実際に訪れると、希望や夢は現実となる。現代の日本人と同じように、いまや彼らも自らの力で目標を見つけだすことが求められるのだ。 現在のグローバル化経済の原点が「ベルリンの壁」崩壊だ。70年代の英国でパンク・ムーブメントを実体験したハービー・山口はここでも歴史の一場面に立ち会っていた。本展では1986年、1989年に東欧で撮影された、一部未発表を含む約30点のモノクロ作品が展示されます。 ブリッツ・インターナショナル 福川 芳郎(文) |
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